医療法人社団 鴻鶴会内野産婦人科小児科
無痛分娩について
当院では陣痛促進剤を使用した計画分娩によって硬膜外麻酔分娩を行っています。
妊婦さんの安全性を考慮し、医師・助産師・看護師のスタッフが十分に対応可能な時間帯として平日の日中に分娩が終了するように実施しており、原則として、夜間・日曜日・祝日は行っていません。
硬膜外麻酔は優れた麻酔方法なのですが、副作用などの問題点もいくつかあります。無痛分娩を検討される方は、以下の内容をご覧ください。
無痛分娩を実施するにあたり、患者さまよりあらかじめ同意書をいただいております。
ご不明な点などは医師・助産師・看護師におたずねください。
硬膜外麻酔の方法
分娩前、もしくは分娩中に脊髄の近くの硬膜外腔と呼ばれる場所に背骨の間から硬膜外麻酔カテーテルを挿入します。稀ではありますが、そのカテーテルを挿入することが困難な場合もあります。
カテーテルからアナペインの局所麻酔薬を注入します。麻酔薬を注入すると、およそ20~30分程度で下肢が温かくなると同時に痛みが和らいできます。場合によっては下肢が動きにくくなることや、痺れが出て歩きにくくなることもあります。また、血圧が低下する副作用がありますので必ず点滴を行います。麻酔薬の注入方法としては機械で持続的に注入する方法と、間欠的に注入する方法があります。麻酔を開始するタイミングは、子宮口が3~5㎝程度に開大し、有効陣痛が得られてからです。あまり早くから麻酔を始めると帝王切開になる可能性が上昇すると報告があります。なお、当院では麻酔科医ではなく産科医が麻酔を行っています。
硬膜外麻酔分娩の効用
- 1出産での痛みの軽減
- 硬膜外麻酔分娩は、陣痛や産道が広がるときの痛みを和らげる効果があります。これらの痛みは個人差が大きく、それほど苦しまずに分娩を終える妊婦さんもいれば、信じがたいほど激痛を感じる妊婦さんもいます。ただ、「無痛分娩」というと全く痛みが無くなるような錯覚を与えますが、完全に痛みが無くなるわけではありません。鎮痛効果には個人差が大きく大変効果的に鎮痛効果が得られる場合もあれば、満足に鎮痛効果が得られないこともあります。
- 2血圧の変動を減少させる
- 妊娠高血圧症候群などを合併している妊婦さんでは、分娩時の血圧の変動を減少させる効果があります。そのような妊婦さんには希望されなくてもこちらからおすすめすることもあります。
- 3軟産道の弛緩作用
- 陣痛により過緊張となっている時や、産道が硬い妊婦さんには産道を柔らかくする効果があるといわれています。
問題点
- 1分娩遷延、器械分娩の頻度の増加
- 硬膜外麻酔は陣痛の痛みを和らげると同時に微弱陣痛にもなりやすいのです。そのため、陣痛促進剤の投与量を調節しますが、それでも分娩時間は麻酔をしない分娩と比較して長くなることが多いといわれています。また、分娩前に感じる怒責感が消失することがあり、器械式分娩といわれる吸引分娩の頻度が増加します。帝王切開率は上昇するという報告もあれば、変わらないという報告もありますが、前述したように分娩進行のあまり早期から麻酔を始めると帝王切開率が上昇するとの報告があります。
- 2鎮痛効果の個人差
- 鎮痛効果には個人差が大きく大変効果的に鎮痛効果が得られる場合もあれば、満足に鎮痛効果が得られないこともあります。また、部位により効果に差が出ることもあれば左右差があることもあります。
- 3硬膜外麻酔の合併症
- 硬膜外麻酔は医療行為である以上、合併症を起こす可能性があります。多くの合併症は対処が可能であるかもしくは自然軽快するものがほとんどでありますが、重篤な後遺症を残す可能性のある合併症も起こりえます(低血圧・背部痛・硬膜穿刺後の頭痛・局所麻酔薬の血管内誤注入など)。
その他
- 1麻酔による児への影響
- 直接的な影響として、現在報告されている範囲ではまず影響ないとされています。また、間接的な影響としては母体の血圧低下による児への血流低下が考えられますが厳重な血圧管理を行えば問題ないと思われます。
- 2硬膜外麻酔を行えない方
- 既往帝王切開後の経腟分娩・骨盤位分娩・双胎の妊婦さんには原則として硬膜外麻酔は行っておりません。
- ※無痛分娩の予約は原則1日1枠とさせていただいています。分娩方法を確認の際に日程の希望をご相談させていただきますが、ご希望に添えない場合もありますのでご了承ください。
- ※無痛分娩の予約は各個人の状況にもよりますが、初産婦さんでは妊娠39週以降、経産婦さんは妊娠37週後半から38週頃に予約を立てさせていただきます。初産婦さんは予定が早すぎると促進剤に反応しにくかったり、逆に経産婦さんは予定が遅すぎると陣痛が来てしまったり、破水してしまったりする可能性もあり早めの予定とさせていただいています。ただし、36週以降の診察によっては日程の変更を提案させていただくこともございます。
無痛分娩に関する対応方針とマニュアル
無痛分娩助産・看護マニュアル
※当院では「無痛分娩取扱のための、『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』に基づく自主点検表」の項目をすべて満たしています。
無痛分娩麻酔管理者
- 土橋 麻美子
- 日本産科婦人科学会産婦人科専門医
- 日本専門医機構認定産婦人科専門医(更新認定日2024年1月19日)

分娩取扱実績
| 全分娩件数 | 経膣分娩 | 帝王切開術 | ||
|---|---|---|---|---|
| 無痛あり | 無痛なし | |||
| 2022年 | 226 | 51 | 152 | 23 |
| 2023年 | 183 | 56 | 103 | 24 |
| 2024年 | 145 | 40 | 79 | 26 |
費用
- 無痛費用
- 100,000円
- ※初産で無痛分娩にすると約730,000円~となります。
- ※当院は東京都の無痛分娩助成事業の対象医療機関です。要件を満たす方は上記無痛費用のうち最大10万円が助成の対象となります。
無痛分娩施設登録内容(JALA)
更新日:2025年9月16日